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第9回 公的遺族年金【フリーランスになる前に学ぶお金の基礎知識】【会社員ITエンジニア向け】

「フリーランスになる前に学ぶお金の基礎知識」では、将来的にフリーランスを目指す会社員のITエンジニア向けに、フリーランスになる前に習得すべきお金の基礎知識を厳選してお伝えします。このシリーズを通して、フリーランスとしてつまずくことなく、充実した人生を送るための知識を身に着けていただけると幸いです。

https://youtu.be/Hs38VnakDMs

「フリーランスになる前に学ぶお金の基礎知識」シリーズの第9回目である今回のテーマは「公的年金保険」です。今回の講義では、ITエンジニアがフリーランスになる前に知っておきたい「公的遺族年金の基礎知識」についてわかりやすく解説します。

「公的遺族年金」の解説に入る前に、まずは公的年金で備えられるリスクについておさらいします。日本の公的年金は、老後、死亡、障害の3つのリスクに対応しています。支給される年金は、それぞれ基礎部分と厚生部分に分かれています。フリーランスが加入する「国民年金」は基礎部分のみで、会社員が加入する「厚生年金」は基礎部分に加えて厚生年金部分も受給できます。本講義では、この3つのうち、死亡リスクに備える「遺族年金」について解説します。

遺族年金とは?

ここに家族を守るために懸命に働く父親がいるとします。しかしその父親が、不慮の事故で亡くなってしまいました。このような状況になった場合、残された家族は一体どうなるでしょうか?

大抵の場合、残された家族は生活に困窮します。特に、父親の収入を頼りに生計を立てていた場合、生活資金が絶たれ、生活が困難になります。このように、家族を支える大黒柱が亡くなると、残された遺族は生活に困窮することになります。これがいわゆる「死亡リスク」です。

この「死亡リスク」に備えるための保険が「遺族年金」です。つまり「遺族年金」とは、「生計を維持されていた家族の生活を支えるための年金保険」ということです。

この「遺族年金」は、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2つに分けられます。「遺族基礎年金」はフリーランスと会社員が受け取れる年金であり、「遺族厚生年金」は会社員のみが受け取れる年金です。

遺族基礎年金の受給要件

「遺族基礎年金」を受給するための要件について確認していきましょう。「遺族基礎年金」を受給するためには、大きく分けて2つの要件があります。1つ目は亡くなった「本人に対する要件」であり、もう1つは、残された「遺族に対する要件」です。本章では、この2つの要件についてそれぞれ確認していきましょう。

まずは亡くなった本人の要件です。「遺族基礎年金」の本人の要件は4つ定められています。

  1. 国民年金の被保険者である間に死亡したとき
  2. 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき
  3. 老齢基礎年金の受給権者であった方が死亡したとき
  4. 老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡したとき

続いて「遺族に対する要件」です。「遺族基礎年金」の「遺族の要件」としては「子」がいることが条件となります。「子」と見なされる条件は次の2つです。

  1. 18歳になった年度の3月31日までの子(≒高校3年生まで)
  2. 20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある子

先ほどまで説明した「遺族基礎年金」の受給要件である「本人の要件」と「遺族の要件」のそれぞれの要件を満たすと、「配偶者」または「子」が「遺族基礎年金」を受給できるようになります。

ここまでお話しした「遺族基礎年金」の受給要件についてまとめます。まず、「遺族基礎年金」を受給するためには、「本人の要件」と「遺族の要件」を満たす必要があります。「本人の要件」には、「国民年金の被保険者である現役世代の方が亡くなった場合」や、定年後、65歳まで老齢基礎年金を受け取るまでの猶予期間である「受給資格がある方」や、65歳以降の「老齢基礎年金を受給中の方」が亡くなった場合などが含まれます。「遺族の要件」は、その亡くなった方に「生計を維持されていた子」がいる場合です。この2つの要件を満たした場合、「配偶者」または「子」が、「遺族基礎年金」を受け取れます。

遺族基礎年金の年金受給額

「遺族基礎年金」の年金受給額について説明します。「遺族基礎年金」の年金受給額は、年金を受け取る遺族が「子のある配偶者」であるか「子」であるかによって異なります。「子のある配偶者」の場合は、816,000円に「子の加算額」を加えた金額が年金受給額となります。一方、「子」が受け取る場合は、816,000円に「2人目以降の子の加算額」を加えた金額が年金受給額となります。

「子の加算額」は、「子」の人数によってそれぞれ定められています。1人目の「子」の場合は234,800円が加算、2人目の「子」の場合も234,800円が加算されます。しかし、3人目以降の「子」の場合は金額が下がり、78,300円が加算されます。

「遺族基礎年金」の年金受給額の目安を、それぞれの条件において表でまとめました。「遺族基礎年金」を「子のある配偶者」が受け取る場合、「子」が1人であれば、年換算の年金は約105.1万円を受け取れます。「子」が2人の場合は約128.6万円、3人の場合は約136.4万円となっています。一方、「遺族基礎年金」を「子」が受け取る場合、「子」が1人であれば、年換算の年金は約81.6万円を受け取れます。「子」が2人であれば、約105.1万円を2人の「子」で割った額それぞれ受け取れ、「子」が3人いれば、約128.6万円を3人の「子」で割った額をそれぞれ受け取れます。

遺族厚生年金の受給要件

「遺族厚生年金」の受給要件について確認していきます。「遺族厚生年金」も「遺族基礎年金」と同様に、年金を受給するためには、亡くなった「本人に対する要件」と残された「遺族に対する要件」があります。

まずは亡くなった「本人の要件」です。「遺族厚生年金」の「本人の要件」は5つ定められています。

  1. 厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
  2. 厚生年金の被保険者期間に、初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に死亡したとき
  3. 1級・2級の障害厚生・共済年金を受けとっている方が死亡したとき
  4. 老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき
  5. 老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき

続いて、「遺族に対する要件」です。「遺族の要件」としては、「生計を維持されている家族」が対象となります。「生計を維持されている家族」の中でも、年金の受け取りには優先順位が定められています。まず、最も優先順位の高いグループは、「子のある妻」、「子のある55歳以上の夫」、「子」のグループです。次に優先順位の高いグループは、「子のない妻」、「子のない55歳以上の夫」です。次に優先順位の高いグループは、「55歳以上の父母」、その次に「孫」となっています。優先度の最後として、「55歳以上の祖父母」となっています。

ここまでお話しした「遺族厚生年金」の受給要件についてまとめます。まず、「遺族厚生年金」を受給するためには「本人の要件」と「遺族の要件」を満たす必要があります。「本人の要件」には、「厚生年金の被保険者」である現役世代の方が亡くなった場合や、定年後、65歳まで「老齢厚生年金」を受け取るまでの猶予期間である「受給資格がある方」や、65歳以降の「老齢厚生年金を受給中の方」が亡くなった場合などが含まれます。「遺族の要件」は、「生計を維持されている家族」がいる場合です。この2つの要件を満たした場合、優先順位は決まっていますが、「配偶者」、「子」、「父母」、「孫」、「祖父母」のいずれかが、「遺族厚生年金」を受け取れます。

遺族厚生年金の年金受給額

「遺族厚生年金」の年金受給額について説明します。「遺族厚生年金」の年金受給額は下記の計算式です。

遺族厚生年金の年金受給額 = 報酬比例部分 × 3/4

「報酬比例部分」の計算式は、細かい条件が定められていますが、ここでは20代から30代の年代に絞って解説します。2003年4月以降に厚生年金に加入した場合、

報酬比例部分 = 平均標準報酬額 × 加入期間(月数) × 0.005481

「平均標準報酬額」とは、厚生年金に加入している間の給与と賞与の月額報酬を基に算出された額です。「加入期間」については、300月(25年)未満の場合、300月としてみなして計算することができます。

「遺族厚生年金」の年金受給額の目安をそれぞれの条件において表でまとめました。前提として、厚生年金に加入中であり、厚生年金の加入期間が300月(25年)以内の場合で算出しています。平均報酬額が400万円の方は年額の年金受給額が約41.1万円となります。平均報酬額が500万円の場合は約51.4万円、平均報酬額が600万円の場合は約61.7万円が受給できます。

遺族年金の年金受給額試算

最後に、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の年金受給額の試算結果をご紹介します。自身や家族の状況を考慮し、もし自分が亡くなった場合に、家族がどの程度の遺族年金を受け取れるのか、金額の目安として参考にして頂けると幸いです。

この試算の条件は、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の受給資格を満たし、国民年金や厚生年金に加入してから300月(25年)以内に亡くなった場合の、「遺族年金受給額」を示しています。グラフの青い部分が「遺族基礎年金」、オレンジの部分が「遺族厚生年金」の受給額です。これまで説明した通り、「遺族基礎年金」は、年金を受け取る方が「子のある配偶者」であるか「子」であるかや、「子の人数」に応じて、年金額が決まります。一方、「遺族厚生年金」は、亡くなった本人の報酬年額に基づいて金額が定められます。

さいごに

今回の講義はここまでです。今回は、「公的老齢保険」について学びました。次回は、こちらも「公的年金保険」のひとつである「公的障害年金」について解説予定です。それではまた次回お会いしましょう。

参考文献

日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)

日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)