ＩＴエンジニアがフリーランスとして働くにあたって契約形態フリーランスのＩＴエンジニアとして働くにあたって、契約形態を正しく理解することは大切です。システム開発に関連する契約形態は、主に「請負契約」、「準委任契約（SES）」、「派遣契約」の３つに分かれます。これらのなかで、フリーランスに関りがある契約形態は、「請負契約」、「準委任契約（SES）」です。今回はフリーランスとして理解しておくべき「請負契約」、「準委任契約（SES）」の契約形態の特徴と、そのメリットとデメリットを解説します。
1.請負契約
請負契約とは、請負人が、仕事を完成することを約束し、依頼者が仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束する契約です。システム・ソフトウェア開発で説明すると、「仕事を完成すること」とは、「システム・ソフトウェアを完成させ納品すること」を表しており、発注者は、納品されたシステム・ソフトウェアに対して、報酬を支払います。このように、請負契約において受注者は、依頼された通りの仕様のシステム・ソフトウェアを成果物として完成させる義務を負うこととなり、システム・ソフトウェアが完成しなかった場合は、発注者は契約を解除して損害賠償請求をすることができます。成果物を引き渡した後も、その成果物に欠陥があった場合には、受注者が補修や損害賠償の義務を負うこととなります。（「契約不適合責任」と呼ばれています）フリーランス（受注者）側の立場に立った、メリットとデメリットは以下の通りです。
メリット
・生産性を高めれば利益率が高くなる
デメリット
・報酬は納品後になることが多い
・予算オーバーによる赤字リスクがある
・契約不適合責任がある（仕様不一致やバグなどの無償改修など）
2.準委任契約（SES）
準委任契約とは、仕事における一部の作業を委託する契約です。請負契約との違いは、請負契約は依頼された成果物を完成させる義務を負うのに対して、準委任契約は、依頼された作業を着実に遂行する義務を負います。SES（システムエンジニアリングサービス）とは、システム・ソフトウェアの開発・保守・運用における準委任契約の一種です。特定の業務に対して、技術者の労働を提供することにより、報酬を受け取ります。報酬金額は基本的に月額単金が定められます。しかし、月額単金がそのまま報酬額になるわけではありません。報酬金額の決定方法は、受注者の稼働により大きく２つにわかれます。固定制と変動制です。固定制の場合は、月の稼働時間を定めない契約です。低稼働でも高稼働でも報酬金額が一定という特徴があります。固定制の場合は、月額単金で定めた金額が、そのまま報酬金額となります。一方で、変動制は、月の基本稼働時間範囲（「清算幅」と呼ばれています）を定めます。稼働時間が清算幅内であれば、報酬額は一定（＝月額単金）となります。稼働時間が清算幅の範囲外であれば、清算が行われます。清算幅の下限を下回れば、月額単金をベースに、報酬額の減額清算が行われ、清算幅の上限を上回れば、月額単金をベースに、報酬額の増額清算が行われます。なお、フリーランス（受注者）側の立場に立った、メリットとデメリットは以下の通りです。
メリット
・成果物の完成義務はない
・労働力の提供のみで報酬が支払われる
・プロジェクトによって、報酬金額を固定制／変動制のどちらかを選択することができる
・固定制の場合、生産性を高めることで稼働工数を落とすことができる（休暇が取りやすい）
・変動制の場合、高稼働の際に、稼働した分だけ報酬が増額される
デメリット
・一般的に契約期間が短く、発注者の都合で契約打ち切りになることがある
・固定制の場合、プロジェクトの炎上などにより残業時間が多くなった場合でも報酬額が増えない
・変動制の場合、精算幅の下限を下回ると、報酬が減額される（長期の休暇が取りにくい）
3.技術力を高めるならSES契約で常駐型フリーランスを目指そう
若手のエンジニアであれば、自身のスキルを高めることが優先的に考えるべきです。技術力を高めるために、まずは顧客先常駐型のSES契約を目指しましょう。常駐型であれば、スキルアップに最適です。個人では到底さわることのない、インフラやミドルウェアを使用することができます。また、実際に顧客と現場で一緒に働くことで、人脈を広げることができますし、コミュニケーションスキルも高めることができます。若手のうちは、顧客先常駐型のSES契約でスキルアップを図り、ある程度スキルが身についてきたら、請負契約により、利益率を最大化していく、そのような戦略が、最も効率のよいエンジニア人生を送れると私は考えています。契約形態をきちんと理解して、ご自身のキャリアプランに役立てていただければ幸いです。
-以上-
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